連載 工学からみた整形外科・1【新連載】
整形外科を支える工学
馬渕 清資
1
1北里大学医療衛生学部
pp.608-612
発行日 2010年7月25日
Published Date 2010/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101759
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■再建外科における医工の出会い
同じ臨床医学でも,内科系と外科系では,その方法論に大きな隔たりがあって,それを支える基礎医学の色合いに明らかな相違がある.内科は,生物学やその応用学である生理学や薬学に大きく依存するので,もともとサイエンス(理学)との結びつきが深かった.一方,外科は,患部の切除を主要技術とするいわば職人芸として発祥しており,英語の内科医doctorに対する外科医surgeonという差別表現からもわかるように,「学」として体裁が整えられたのは最近のことである.
外科系の基礎科学に,学としての体裁をもたらしたのは,20世紀後半における切除外科から再建外科への進化である.患部を切除した組織や臓器の機能再建を目指すには,その機能についての深い理解が必要である.そこに,基礎科学の活躍する場面が登場したからである.そして,ひとたびそうした機会が与えられると,その範囲は,生物学関連分野に止まらず,広大なものとなっていった.機能再建技術の柱である代用臓器として,移植組織や再生組織に加えて,人工材料すなわちインプラント材料が用いられるようになったためである.インプラント材料,つまり人工臓器や人工器官は,工業製品である.その開発や設計製作には,材料学,電子工学,機械工学など,工学の多くの分野が関与する.その分,外科系の基礎科学の範囲が広がったのである.
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