整形外科/知ってるつもり
軟骨組織のバイオイメージング
大橋 俊孝
1
1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科分子医化学分野
pp.454-457
発行日 2010年5月25日
Published Date 2010/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101733
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関節軟骨は硝子軟骨からなり,白色で光沢があり,適度に硬くて軟らかい性質を備える.関節軟骨により加重は分散され,骨が受ける衝撃が和らげられ,また関節が動くときに骨と骨が擦れ合わず滑らかに動かせるようにできる.われわれが飛び跳ねたり,膝などの関節を滑らかに動かせたりできるのも関節軟骨の働きのおかげである.
関節軟骨は80%の水分,20%の細胞外マトリックスとわずかな軟骨細胞から構成されている.軟骨基質の基本成分は,Ⅱ型コラーゲンとアグリカンなどのプロテオグリカンである.アグリカンはリンクプロテインとともにヒアルロン酸に結合しアグリカン会合体を形成し,それがコラーゲン線維の網目構造内に絡まった形をとっている(図1).さらに,アグリカン自身が多数のグリコサミノグリカン鎖(主にコンドロイチン硫酸鎖)を持ち強い負の電荷を持つことから,軟骨基質にナトリウムイオンとともに水分子が引き寄せられる3).その結果,ゲル状の性状をとり,膨張力を生ずる.一方,取り囲んでいるコラーゲン線維は膨張力に対して抵抗力をもっている.したがって軟骨基質は,例えるならばコラーゲン線維の網の中に水がパンパンに詰まった水まくらのような構造を適度に維持し,硬いながらも柔軟性を備えた軟骨固有の性質を付与する1).プロテオグリカンが水分と結合しやすい性質は,関節液に含まれている水分と栄養分を軟骨細胞に与える働きもある.さらに,軟骨基質のマトリックス分子にはサイトカインや成長因子と結合するものがあり,それらを介して軟骨細胞の形質維持に関与する可能性も示唆されている10).
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