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医工連携研究は,遺伝子診断・治療,遺伝子創薬,テーラーメイド医療,再生医療から人工臓器,精密手術機器,画像診断,放射線治療などにみられるように,先進医学の発展と普及には欠かせないものとなってきている.さらに,この領域における人材育成,産学連携での「ものづくり」や新産業創生への展開も期待されている.運動器の領域でも,再生医療,バイオマテリアル,バイオメカニクス,人工関節,手術機器,リハビリテーション,義肢装具にいたるまで医工連携研究が幅広く行われている.専門分野の異なるもの同士が,連携しながら,一方だけでは成し得ない成果が得られることが連携研究の魅力である.しかしながら,このような融合領域では,「ひとり医工連携」(ひとりなので厳密には連携でない)とも言える工学部も医学部も卒業したマルチ人間タイプの研究者や,工学技術を単に道具として使用している医師が成果を上げていることも多く,真の医工連携で研究成果を上げるのは容易ではないと思えることがある.どちらかの力関係に圧倒的な差があれば,協力関係上の問題は表面化しないが,一方の力の成果のみしか出ず,また,相手方を利用するだけの関係では長続きはしない.場合によっては工学者が医師のお手伝いをしているだけで,そのような研究は工学的な学術的価値がないといわれそうである.反対に,医師との情報交流がいかにも少なそうな工学者の研究をみると,果たしてその成果が臨床的に有用で,最終的に「人々の健康な暮らし」に大きく貢献できるのだろうかと疑問を抱くこともある.
医工連携は医学と工学の異文化交流であり,うまくいく場合でもその逆でも男女の恋愛関係と共通する点がみられる.まず,出会いがなければ始まらない.偶然,運命の縁に結ばれてよい出会いがあることもあるが,それぞれの専門学会に出会いを求めて互いに参加するくらいの積極的行動が必要である.医工連携や産学連携推進のためのお見合いファンドや会議,また大学の医工連携の枠組みなどは存在するが,重要なのは良好な関係を育む枠組み以上に当人同士が熱くなれるテーマを持てるかである.うまくいく場合は,両者の施設が異なっても,物理的距離が遠くても,遠距離恋愛のようにうまくいくこともあり,そのような連携研究にも研究予算での支援がなされるべきである.医工連携研究では「医学と工学の異なった視点から興味を持って研究に情熱を注げること」がよい関係を続ける重要なポイントである.同じ視点ではお互い研究の競合相手となるだけである.
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