最新基礎科学/知っておきたい
関節軟骨が持つ負荷に対する微細構造変化
笹崎 義弘
1
1国立病院機構村山医療センター整形外科
pp.270-275
発行日 2007年3月25日
Published Date 2007/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101015
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
軟骨は力学的負荷により変形し,衝撃を吸収します.古くから,「力学的負荷による軟骨損傷はそのframeworkであるcollagenの破断である24)」,と考えられてきましたが,力学的負荷による軟骨collagenの微細構造変化と破断のメカニズムはいまだ明らかにされていません.そこで,本稿では,力学的負荷による軟骨の変形と破断のメカニズムをマクロレベルからナノレベルまで明らかにします.牛大腿骨膝蓋関節面から軟骨表面に平行な長軸を持つ全層のダンベル型軟骨小片を作製し,それぞれの軟骨小片に引っ張り試験器を用いて無負荷の状態から完全断裂に至るまで各段階の伸張負荷を加え,固定しました.共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)と走査型電子顕微鏡(SEM),透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて,伸張負荷によるcollagen配列の変化を観察しました.軟骨表面のcollagen meshworkは,伸張負荷が増すに従い負荷と平行に配列を変化させました.25%の伸張負荷にて,軟骨最表層のcollagen線維束が破断し,さらに負荷が加わると深層のcollagen線維へと破断が進行しました.軟骨のcollagen meshworkが伸張負荷の方向に再配列することにより軟骨組織は伸張(変形)し,その後,破断が生じることが明らかになりました20).
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.