視座
神経障害とその予後
谷 俊一
1
Toshikuzu TANI
1
1高知大学医学部・生体機能・感染制御学講座運動機能学
pp.1143-1144
発行日 2004年9月1日
Published Date 2004/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408100531
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末梢神経のエントラップメントニューロパチーや脊椎脊髄疾患など,圧迫性神経障害は整形外科が担う重要な分野である.このような神経障害による麻痺に対しては神経除圧手術が行われるが,一般に,麻痺が重症であるほど,また麻痺の期間が長いほどその回復は悪い.このことは経験的に,あるいは多数例の臨床成績を検定した結果の一般論であって例外も多く,目の前の個々の症例がどれほど重症なら,あるいはどれほど罹病期間が長ければ麻痺の回復が悪いのかは判断できない.
末梢神経や神経根,馬尾,脊髄白質はいずれも軸索と髄鞘(有髄線維)からなる神経線維であり,インパルスの伝播によって中枢から末梢あるいは末梢から中枢に情報を伝えるという役割を担っている.運動麻痺や感覚麻痺の原因のほとんどは,圧迫によってインパルス伝播が途中で遮断され中枢や末梢に到達できないことによる.この場合,神経線維の障害パターンは予後の悪い軸索変性と予後の良い伝導ブロックに二分され,両者はインパルスが障害部を越えて伝播されない点では共通で臨床上鑑別できないが電気生理学的には鑑別できる.したがって,麻痺の予後は軸索変性に陥っている線維の割合を電気生理学的に評価することにより診断できる.
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