視座
整形外科医の知らないところで
浜西 千秋
1
Chiaki HAMANISHI
1
1近畿大学医学部整形外科
pp.903-905
発行日 2004年7月1日
Published Date 2004/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408100488
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柔道整復師を父,祖父,叔父,そして親戚に持つ整形外科医は現職教授にも各大学医局のスタッフにもたくさんおられる.かなりの柔道整復師が,その収入を自分の息子や親族を,医師に,なかんずく整形外科医にするべく投資してきた歴史がある.これは日陰の存在に甘んじてきた親たちが,息子だけは医療という日向に出してやりたいという切なる思いがあったからであろう.1998年には14校であった柔道整復養成学校が2004年4月に68校になるが,その理事・校長・教師たちはもとより,その国家試験を管轄する柔道整復研修試験財団や,昨年日本学術会議のメンバーとなった柔道整復接骨医学会の指導者には高名な整形外科医・教授たちが名前を連ねておられる.各地・各種の柔道整復師の研修会の常連講師として招かれる有名な整形外科医も多い.
私はここ数年,柔道整復業界を医療と無関係な『医療類似行為者』とみなし,診断のない施療を行う接骨院の存在が国民の健康被害につながり,危険であると主張し,臨床整形外科医会(JCOA)とともに政治運動や行政運動や,マスコミへのキャンペーンによって,不正の温床となっている受領委任払いの特例を撤廃させることにより,業界の自然消滅を図る制度闘争を最重要課題としてきた.しかし,そうこうするうちに柔道整復学校の歯止めのない激増は,毎年4,000~6,000人もの有資格者を生み出すこととなり,業界はますます肥大化し,接骨・整骨院の過当競争がこれからさらに野放図に突き進むことにより,国民の健康は今以上に損なわれようとしている.
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