特別シンポジウム どうする日本の医療
正念場の日本の医療
中島 みち
pp.978-979
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408100174
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私は34年前の乳がん手術時に受けた特殊な放射線治療の後遺症で胸骨が折れ,肺まであと1ミリということで,先月緊急入院しました.すでに頚腕神経は焼け焦げ右手不自由,炭化した鎖骨も除去,今後は胸骨の壊死と,厳しい後遺症の続く放射線治療ですが,当時,最新治療として,しっかり説明を受け,私も生きるための夢を託した治療ですから,それなりに「納得」してきました.しかし,改善手術が成功した今,私が愕然としたのは,「見捨てられた病い」として,苦しんできた挙句にやっと,たまたまの出会いで実現した今回の手術は,なんと形成外科では,30年も前から確立された治療だったのです.私は,このようなたまたまの出会いによるのではなくて,日本全国バラツキなく,標準に達した治療が手に入るように,医療の精度管理,品質管理を徹底させ,各標榜科の壁を越えて,情報開示のシステムが整備されてほしいと考えます.
私は常々,医療の主役は患者であってほしいと言っておりますが,患者こそが医療の結果のすべてを,たった1つの命,かけがえのない身に引き受けているのですから,当たり前のことではないでしょうか.そして,その患者の「納得」こそ医療のすべての根源だと考えます.なぜなら,ほとんどの医療に「絶対」はないからです.医学も「不確実性の科学」,ましてや医療となれば,科学を取り入れた実践の技術ともいうべきものです.また患者と医療者の間にも「絶対」はないのです.医療者の側も全く同じ医療を行うものでもないし,患者の側にも個体差があり,関係は相対的なものなのです.
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