特集 薬物療法マニュアル
Ⅶ.併存病態の理解と薬物療法
1.精神・神経疾患
精神分裂病,感情障害
野村 総一郎
1
Soichiro NOMURA
1
1防衛医科大学校精神科
pp.401-403
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903898
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精神分裂病の基本概念
いわゆる精神病の中では代表的な疾患であり,有病率は0.7%とされる.かつては人格崩壊に至る予後不良の疾患で,はっきりした治療法もなく,青年期に初発して精神病院の中で一生を終えるというイメージで捉えられていたが,最近はこの概念が大きく変化している.現在では大まかに言って,予後良好に経過する群,支えを必要とするが十分に社会適応できる群,社会適応という面ではなおも予後の良くない群が各々3分の1ずつであるとされる.経過がかつてより良くなってきたのは薬物療法を中心とした治療法の進歩,社会的な理解が進み,社会復帰やリハビリテーションシステムの確立が進んだこと,精神保健福祉法などの法的整備,などに基づく.
病態生理や病因論に関しては画像診断や分子遺伝学的な研究などの先端科学のスポットが当たりつつあるが,現在までに確定的なのは脳内ドパミン受容体の機能亢進が関係しているということだけであり,それがいかなる原因に基づくのか,他の神経伝達物質はどう絡んでいるのか,遺伝子の関与はどのようなものであるか,などについての結論は出ていない.したがって予防法も確たるものは提唱されるレベルにはない.治療法はあくまで薬物が主体だが,急性期の対処は進んだが慢性期への方法が乏しく,今後の課題である.
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