メディカルエッセー 『航跡』・36
米国医学部入学制度(2)
木村 健
1
1アイオワ大学医学部外科
pp.1330-1331
発行日 1999年10月20日
Published Date 1999/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903748
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入学試験の面接を担当するには,「よし,引き受けた」という返事をするだけでは済まない.面接専門の心理学部の教授によって実施される「入学試験面接担当官セミナー」受講が必須である.通常7時に始まる病院の日常業務の前に1時間,眠い眼をこすりながら指定されたセミナーに出てみると,70名にのぼると聞いていた面接担当志望者の中で出席しているのは5人だけ.1回5人で週3日,同じセミナーを数週間にわたって繰り返し,70名全員が受講し終えるまで続けるという.ニッポンの組織では,全員を一堂に集め1回で終了するのが講習の定形である.だが,セミナーを受けてみると,ニッポン式の講習では到底習得できない面接技術であることがわかった.
面接の目標は,質問の意味を速やかに理解する知性,思考の統合能力,対話維持の教養を備えた常識の判定である.セミナーはこれらの能力の判定技術をマスターするためにある.講師は5人の受講者に噛んでふくめるような解説をしてくれる.ビデオテープで見せられた模範面接は,テーブルを中にして,椅子に座るときは背すじを伸ばし,前傾して肘をテーブルについてはいけない,視線は相手の目から外すな,質問はゆっくりと明確に,受験者が固くなっているようなら,質問を始める前に相手をリラックスさせるため日常的会話から入れなどなど.セミナー終了真際には,面接の実際のビデオをテレビに映して,受験者の応答を評価するテストを受けさせられる.
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