小児外科医の独白・1【新連載】
先天性横隔膜ヘルニア
角田 昭夫
pp.86-87
発行日 1991年1月20日
Published Date 1991/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900357
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昔話1 賛育会病院から東大第二外科に戻り,小児外科グループで勉強していた1966年のこと,ちょうど石田正統助教授(現,埼玉医科大学学長)が,外科学会総会のシンポジウムの1つ「先天性横隔膜ヘルニア」1)を引き受けておられた.ところがなかなか新しい症例が来ない.そのうちに,当時の日赤中央病院(現,日本赤十字社医療センター)に横隔膜ヘルニアの新生児がいるという情報が入った.当時の院長は故三谷 茂氏(産科)で,その女婿にあたる吉村敬三氏(当時,東京大学胸部外科,後に浜松医科大学副学長,1987年逝去)を通じての情報である,秋の夜も大分更けた頃,石田,吉村両先生とともに三谷院長のところへ伺った.
新生児は軽いチアノーゼはあるが,状態は悪くない.レントゲンで診断ははっきりしている.血液ガスのモニターその他,どうしても新生児を東大の方へ移して手術をしたい旨,三谷院長にお伺いをたてた.ところが院長はなかなか「うん」といってくれない.「君達がここで手術をしなさい」の一点張りである.大分粘ってようやく「仕方ない.いいようにしなさい」の一言.お礼もそこそこに,たしか石田先生の乗用車で新生児を連れて帰り,緊急手術は成功,学会報告に貴重な資料を得た.
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