FOCUS
糞便微生物移植—腸内細菌をターゲットとした新規治療法
南木 康作
1
,
金井 隆典
1
Kousaku NANKI
1
1慶應義塾大学医学部内科学(消化器)
pp.234-238
発行日 2018年2月20日
Published Date 2018/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211948
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糞便微生物移植とは
糞便微生物移植(fecal microbiota transplantation:FMT)は,患者の消化管に健常者の糞便を用いてその微生物叢を移植する治療法である.この治療法は,再発性難治性のClostridium difficile感染症(Clostridium difficile infection:CDI)に対して絶大な効果を発揮することが報告されたことを契機に,近年の腸内細菌に関する知見の蓄積にも裏打ちされる形で,現在大きく注目を集めている.
これまでもいわゆる善玉菌の摂取により健康を増進させようという試みは,納豆やヨーグルトなどの発酵食品の摂取という一般的なものから,プロバイオティクス製剤の内服投与という医療的なものまで,幅広く行われていた.FMTはこれらの方法に比べ,糞便中に含まれる多様な菌種と多量の菌数をもって,強力に腸内細菌叢を是正しうる治療法である.発酵食品やプロバイオティクス製剤は,せいぜい1〜数種類の菌種の摂取に留まるのに対し,糞便中には約1,000種類ともいわれる多様な腸内細菌が含まれる.そのため,これまでの健康増進法に比して強力な効果が期待されている.
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