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Fibrin接着剤の創傷治癒に対する影響と臨床応用
Fibrin adhesive, and its influence for wound healing process and clinical trial
中村 紀夫
1
Norio NAKAMURA
1
1東京慈恵会医科大学第2外科
pp.161-166
発行日 1985年1月20日
Published Date 1985/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208929
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はじめに
外科の手術は,歴史的にみると,外傷の縫合から始まつたといえよう.開いた傷口をどのように接着するかということが,外科の原点であつたと思われる.この接着という目的のために,紀元前3000年の昔から今日に至るまで,糸による縫合が行われてきたわけである.これは,体表のみならず消化管においても同様であるが,消化管の手術においては消化液の存在等により治癒の条件が悪くなる.場合によつては,創の接着のために必要であるべき縫合糸がかえつて治癒を障害し縫合不全を起こすこともある.
そこで,糸に対して改良が加えられ,組織反応の少ない材質のものや,生体内に吸収されるものが開発されてきた.その一方,縫合糸を使わない創の接着法はないか,ということで,生体内に存在するfibrinogenを接着物質として用いてみようという試みがおこつてきた,この試みは,1940年代から検討されてきたが,当時はことごとく失敗に終つた.というのも,fibrinogenはかなり溶けにくいものであるが,創の接着に用いるためには,fibrinogen液がかなりの高濃度でなければならない.その高濃度のfibrinogen液が当時の技術では得られなかつたのである.
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