特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている
心臓手術
Blalock-Taussing吻合手術で,a)鎖骨下動脈を結紮切断後,その末梢側の結紮がゆるくて切断端が筋肉内にもぐつてしまつた.b)吻合しようとした鎖骨下動脈の鉗子がはずれてしまつた
新井 達太
1
1東京慈恵会医科大学心臓外科
pp.866
発行日 1984年6月20日
Published Date 1984/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208725
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a)鎖骨下動脈を剥離して行くと胸管が見られるので胸管の左右を結紮して切断する.不注意に胸管を結紮せずに切るとchylothraxを起こす.さらに剥離を進めると椎骨動脈,甲状頸動脈,内胸動脈などが分岐するので,その中枢側,末梢側を結紮して切断する.鎖骨下動脈は同様に結紮してから切断するが,一番深い所のため結紮がゆるくて切断端が糸からはずれて筋肉内にもぐりこみ出血することがある.吻合に十分な長さが欲しいので鎖骨下動脈を引き出すことが多いので切断端は筋肉内に逃げこみ切断端を見つけようとしてもなかなか見つからず,かなりの出血をみることが多い.そのため切断端を見つけようとせず出血部をガーゼで押さえこむ.10分位押さえていると出血はほとんど止まる.ここで筋肉を分けて断端を見つけようとしてもまた出血するだけのことが多いので,atraumatic needleで筋肉に深めた針糸をU字,さらにZ縫合を加えて二重に結紮する.
b)鎖骨下動脈中枢側の鉗子がはずれると切断端は血液を噴き出しながら,くるくる回る鼠花火のように左右上下と動き回る.切断端をつかもうとしてもなかなかつかまらず,胸腔内は血の海となる.切断端をつかまえるのは無理なので鎖骨下動脈の大動脈起始部をおさえるか,強くつまむと出血が少なくなると共に切断端の動きは少なくなる.その時点で切断端をつかむか鎖骨下動脈のどこかに鉗子をかけるとよい.
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