特集 外科外来マニュアル
私の治療
総論
外科外来患者の診療手順
牧野 永城
1
1聖路加国際病院外科
pp.801-803
発行日 1982年5月20日
Published Date 1982/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208033
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□はじめに
外来患者といつても初診と再来とでは診療の手順に大きな違いが出てくる.初診の場合はその患者の診療の出発なのだから最も重要なことはいうまでもないし,本来,疾患の種類にかかわらず,頭の先から足の先まで調べるべきものである.成書はそう教える.しかし現実の医療では,その実践は至難のわざである.新患患者の一人一人に完全かつ詳細な診察を行うには,一人に少なくも30分,ときには1時間またはそれ以上もかかることだろう.現在の日本の保険診療では,初診を5分ですまそうが,1時間かけようが,一律に理髪代にも及ばぬ1,450円と決められている.技術料がこれだけ抑えられ,軽視されると,1人の患者にそう時間をかけるわけにゆかず,1日に40〜50人,人によつては80人またはそれ以上の患者を診るという話もきく.これではとても理想的な診察などは望めるわけはない.
理想の実践が所詮無理だとした場合,現実をどれだけ理想に近づけるかは,医師の経験と能力と心構えの問題とでもいうべきか.とにかく,以下に述べることは,著者が,開業医に比べるとかなり時間的には恵まれた診察の条件下でそれでも,理想からは程遠い診療をしながら,何とか守りたいと努力している診療の内容である.
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