特集 外科外来マニュアル
私の治療
上肢・下肢
肘内障
加幡 一彦
1
1三井記念病院整形外科
pp.676-677
発行日 1982年5月20日
Published Date 1982/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207981
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□概説
歩き疲れた幼児の手を親がつよくひつぱる.幼児は急に泣きだして腕をだらりと下げ,肘を曲げなくなる.無理に曲げようとするとさらにはげしく泣くので,親はあわてて病院にかけこむ,医師が簡単な処置を加えたらすぐ治り,親子は安心して帰宅した.—以上が小児肘内障の典型的な経過である.
はちまきのように橈骨上端をとりまいている輪状靱帯が,上方に転位して運動障害をきたしたのが肘内障であり,はちまきが少しずれてひつかかつた状態である(図1,2).肘は伸展して前腕はやや回内位をとり,屈曲も回旋もできなくなる.動かさないかぎり痛くないので,幼児は来院時には泣きやんでいる.自然に整復されることもあるが,一晩すごしてももどらない場合もある.親は「肘がはずれた」とか「腕が麻痺した」という表現をとることが多い.
2〜3歳児に多いが新生児にも年長児にもみられ,まれには成入に発生して整復に静脈麻酔を要した例がある.
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