histoire de la chirurgie 外科史外伝—ルネッサンスから"外科の夜明け"まで・4
外科アカデミー創立の前後
大村 敏郎
1
1川崎市立井田病院手術室
pp.537-540
発行日 1982年4月20日
Published Date 1982/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207938
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□植物園の外科
18世紀に入る前にもう一つ触れておきたいことは,教育の場についてである.セーヌ川左岸で,現在サルペトリエール病院やピティエ病院の並んでいる「病院大通り」の西隣りに植物園がある.一見医学との関係はなさそうに思えるが,1626年に発足した当時は王立医学植物園という名のついた施設であつた.はじめ植物学と化学の講座がおかれた.
前回少し述べたように,パリの医学部と対立関係にあつた南仏のモンペリエでは1593年に医学部が植物園(図2)を作つており,講義のための円形講堂や博物館を付設していた.パリでもこれに習つて国王ルイ13世が作ろうとしたが医学部の反対にあい,結局医学部とは無関係に王立の医学植物園としてスタートした経過がある.そして1673年には解剖と外科の講座が設けられて,解剖学のピエール・ディオニス(Pierre Dionis,1643〜1718)が活躍するのである(図3).ディオニスは「植物園で行つた外科手術講義録(1707)」を出版し,外科的臨床解剖学の基礎作りをした人といえる.このように医学部以外にも新しい医学教育の場がいくつか出てくることが17世紀の特徴でもある.
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