表紙の心・7
フランス外科アカデミーのマーク
大村 敏郎
1,2
1川崎市立井田病院外科
2慶応義塾大学医史学
pp.1232
発行日 1988年7月20日
Published Date 1988/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210133
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今月の表紙はフランスの外科アカデミーのシンボルになっているマークである.聖コーム教会に本拠を置いたパリの外科医組合が学術団体として王立外科アカデミーを組織したのは1731年の暮のことである.組合の他に王ルイ15世の外科医たちや王立植物園の解剖学者たちも加わった.1731という年がマークの中に刻まれている.聖コーム兄弟という3世紀のキリスト教徒の聖人に信仰を寄せていた外科医たちがアポロ(Apollo)とサルタリス(Salutaris)というギリシャ神話の神々を引き出してきたのはヘレニスム文化への回帰,つまり一種のルネサンスということになるのである.
サルタリスはラテン語であり,ギリシャ神話のヒギエイア(Hygieia)に当り,衛生(Hygiene)の女神である.太陽と健康の神アポロとは祖父と孫娘の関係である,ヒギエイアの持っている杖が,2人の中間の世代である父親,医の神であるアスクレピオス(Asklepios)の杖で,医の象徴として最も有名なものである.蛇は1匹でなければ医の象徴ではないのだが,時々2匹の蛇がついたヘルメス(Hermes)の杖が誤って使われるのは残念なことである.
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