特集 脳卒中の外科
EDITORIAL
脳卒中の外科について
佐野 圭司
1
Keiji SANO
1
1東京大学医学部脳神経外科
pp.1527-1528
発行日 1975年12月20日
Published Date 1975/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206392
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「卒中」とは
卒中(卒:にわかに,中:あたる)とはapoplexy,Apoplexie,apoplexiaに相当する言葉であるが,後者はギリシヤ語のἀποπληξίαに由来したものである.このギリシヤ語名詞はヒポクラテス以前より使用されていたといわれ,ἀπο(…から)とπλήγη(打撃)から合成され「打撃により打ち倒される」ことを意味する.また別の説によればἀποπλ-ήοσσειν(打ち倒す)という動詞から由来した語であるともいう.にわかに神秘的な力にあたつて打ち倒されたという意味で,まさに英語のstroke,独語のSchlagにぴつたり相当する.「卒中」も同様で,「急激に発症した脳血管障害」を呼ぶにふさわしい述語である.「脳卒中」は「卒中」に部位を示す語をつけくわえてより詳しく表現したものと解してよいであろう.apoplexiaと呼ばれる病態が脳出血によるものであることをはじめて見いだして報告したのはJohann Jacob Wepfer(1658年)であるとされているが,現在は脳卒中と呼ばれているものの中には脳出血以外に種々の病変がふくまれていることが明らかにされている.
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