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特集 出血治療のPitfall
診断困難な上部消化管出血の治療—とくに胃粘膜下動脈瘤破綻について
Massive hemorrhage from routinely undetectable lesion in stomach:Rupture of aneurysm of gastric submucosal artery
小坂 進
1
,
木下 睦之
1
Susumu KOZAKA
1
1金沢大学医学部第2外科教室
pp.1265-1271
発行日 1972年9月20日
Published Date 1972/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205676
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はじめに
上部消化管の急性大量出血をおこす病態は数多くあるが,近年X線・内視鏡検査など診断技術の進歩によつて,出血病巣の性状と部位を明確に認知し,適切な治療を行ないうる段階に達しつつある.しかし,現在でも,病巣が微小な場合など,これらの検査法を駆使しても,病態を十分に把握し得ないままに,持続する出血に対処しなければならない例も決して少なくない.
本年2月に大阪で開催された第2回消化器外科学会大会の主題のひとつに消化管出血がとりあげられ,静脈瘤出血・潰瘍出血・癌性出血を主体に多くの発表があつたが,病巣の確認が困難であつた出血例についても検討がなされた.そのなかの"外科的処置の困難な急性消化管出血"の演題で,信州大学第2外科から報告された症例は,本誌で企画された出血治療におけるPitfallの好個の例と思われるので,ここに,その抄録を引用する.「52歳男性で,空腹時の心窩部痛,吐血および下血のため,出血性胃潰瘍として当科へ入院し,即日手術を施行した.切除胃の粘膜には吐血・下血の原因となるような出血巣は認められなかつた.術後も吐血・下血が持続したので再開腹した.胃切開を施行し,胃内腔をみるに出血巣は発見できなかつた.以後も下血が持続し,10日後死亡した.剖検所見では,胃噴門部後壁よりの粘膜内小動脈瘤の破裂であつた」.
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