患者と私
患者と名前
榊原 仟
1
1東京女子医大
pp.1406-1407
発行日 1970年9月20日
Published Date 1970/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205210
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□医者が名利を感ずるとき
汽車の時間の関係で上野で時間が余り,映画でも見てと,ある劇場に入った.
座席が満員で,後ろの方で立つて見ていると1人の男が前の方から私に近づいて「先生」という.先生というからには私が医者だと知つているひとに違いない,「席があいています.私の席ですが私は若いですから先生座つて下さい」とのこと.私がためらっていると,「家内が先生に手術して貰った××です.お蔭様で家内も元気になりましたので,ほんとうに久し振りで映画をみにきたのです.家内が先生だというので驚いてお迎えにきました.」どうぞどうぞといわれたが,実は汽車に乗らねばならぬ,その時間がきたのだからと説明して断わった.
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