海外だより
パリ消化器病研究所
島津 久明
1
1東京大学医学部石川外科
pp.836-838
発行日 1969年6月20日
Published Date 1969/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204875
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
パリの北端ボルト・ド・サントゥアンで地下鉄を降りると,すぐその街角にパリ大学医学部に付属する病院の一っHôpital Bichatがある.モンマルトルの丘の北側斜面の裾野に拡がるこの界隈は,灰色のすすけたアパートや商店街が密集たていわゆる下町的雰囲気に包まれた一帯である.隣りの四つ辻ボルト・ド・クリニァンクールではパリ名物の一つ「ノミの市」も毎週末に開かれている.ニイ街道の歩道一杯に接して黄土色の古いレンガ造りの建物が立ち並び外から見るとあまり病院という印象を与えない.著者はこの敷地の一隅にある消化器病研究所で約1年半の期間その研究活動の一環に加わつて滞在した.数年前に新設されたばかりのこの研究所は国立健康・医学研究機関に所属する一分科施設でここだけが近代的な装いをもち,昔ながらの古めかしい臨床病棟の間で異色を放つている.所長のS.Bonfils教授は同病院内科の主任を兼任する当年46歳の気鋭の学者である.十数名の研究員と約20名のテクニシァンで構成されるこの研究所は決して大規模な施設ではないが,生化学・免疫・生理・病理・電顕・アイソトープなどの部門に細分され,所長がLambling教授の助手時代から手がけている胃分泌の研究に主力をおいて精力的な活動を行なつている.
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.