講座
頭部外傷後遺症の治療—〈その2〉特にcervical syndromeを中心に
景山 直樹
1
,
田中 衛
1
,
池田 公行
1
,
頼国 壌
1
Naoki KAGEYAMA
1
1関西医科大学脳神経外科
pp.1171-1178
発行日 1967年8月20日
Published Date 1967/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204388
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頭部外傷急性期の症状が一応軽快ないし消失したあとで,頭痛,眩暈,悪心,嘔吐,視力障害(主に目のかすみ),肩こり,四肢のシビレ感,脱力感,上肢の知覚異常,運動麻痺などの不快な症状が長期間持続しているような症例はきわめて多い.これらの症状は頭部外傷の重症度とはあまり関係なく,かえつて1,2型の比較的軽い症例に多い,最近では,これらの症状は,脳自体の変化によつて起こるものではなく,大部分が頭部を打つたさいに,間接的外力を受けた頸部の損傷に由来した症状,いわゆる"cervical syndrome"であることが明らかになつてきている.そして同様の症状は,自動車の追突事故のさいに定型的な形をとつてあらわれ,一般にはそれがwhiplash injury(むちうち損傷)と呼ばれている.そのさいには頭が他の物体にあたつてはいないが,頸部はまず急激に過伸展状態となり,さらにそれについで反動的に過屈曲位をとるので,ちようどむちを打つ形となるために,この名前が用いられているのである.
頭部を打つた時に,頸部の急激な運動が起こり,cervical syndromeが起こる.むちうち損傷のさいに,頸部の急激な運動で類似の症状をあらわし,頭はほかの物体にあたつていないので,脳の損傷がまつたくないように思われがちであるが,そのさいにも急激な頭の振れにより,脳実質は頭蓋内板へうちつけられるわけであるから,この両者の間に本質的な差はない.
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