随筆
それからそれ(その2)—三條広道かど
青柳 安誠
pp.246-247
発行日 1965年2月20日
Published Date 1965/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203546
- 有料閲覧
- 文献概要
私は学生時代の終りと外科医になつた初め頃には,三条広道(ひろみち)かどにあつた深川旅館で、夕食をとつていた.京都の古街は碁盤の目のように整地されているので,三条通りと広道通りのクロッスしたかど屋敷に建つている旅館であることが,この簡単な表現ですぐわかるのだが,これは旅館と名がついているものの,客間が二階に三ツほどあつて,伝法肌のきさくな六十に近いおばあさん未亡人が,小遺かせぎに経営していたささ医やかな旅館である.
だから,いわゆる本格的な旅の人などはほとんどなくて,徳島生まれのこのおばあさんの知己紹介で来た人とか,近くの岡崎公園で博覧会などがあると,そこに集る商人が泊つたりしていたのである.
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.