外科の焦点
救急医療の体系化
菊地 真一郎
1
1日本医師会
pp.1617-1622
発行日 1964年12月20日
Published Date 1964/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203491
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近ごろ,毎日毎日の交通事故や工事現場の災害,それに加えて三河島事件,鶴見事件,あるいは三池炭坑爆発事故など大きな災害が相次いで発生し,新聞にテレビにと大きくとり上げられ,救急医療対策の重要性が問題とされてきた.激増する交通事故や災害事故には,さすが腰の重い役人や,医学教育者も,また国会の代議士はこの時とばかりに大きく問題としてとりあげ,社会的焦点として医学界も,社会も真剣に考えるようになつた.
なにかことが起きなければ動かないというのが役人や政治家のくせだが,それでもやらないよりはましか、さて外科領域こそは歴史始つて以来,一番最初にとりあげられた医学,医術であると思う.歴史的過程を経て文明の進歩にともない疾病の種類や様相も一変し,その数も増えてきた.寿命による生死の問題はともあれ,今日では外傷による傷者の救命と社会復帰が一番問題になつてきた。結核や癌の治療などには十分とはいえないが一応大学を始めとして,各病院,研究所で積極的に研究が進められてきた.これに反し,救急医療,すなわち,災害事故の激増にともないその対策の体系化,組織化が必要となつたにもかかわらず,実は大変遅れていた.
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