発行日 1963年1月20日
Published Date 1963/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203006
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「臨床外科」が戦後の荒廃のさなかに発足してから,今日にいたるまですでに17年の歳月を経過した.最近の外科学の進歩は生理学・生化学・薬理学・病理学などの基礎医学の進展に支えられて瞠目に値する飛躍ぶりである.しかも明日の外科学は,ただに基礎医学の成果を摂取するに止まらず,工学・理学関係の隣接領域にもわたつてその成果を積極的に採り入れてゆくことになる.人工臓器の進歩発達には,そのような領域における成果がものをいうことであろう.
如上の事実は,外科学の進展が隣接科学や基礎医学の進歩の土台の上に構築されている面のあることを認識させるものであるが,そのことをもつて外科医が隣接科学や基礎医学の分野に身を挺する要請にはならない.外科は臨床の学問体系であり,あくまでも臨床の場においてその成果が問われなければならないからである.外科医に要請されることは,今日の診療の進歩にふさわしい知識を各方面から摂取してそれを臨床の場に生かしてゆくことにほかならない.今日と明日の外科医に要請される開眼は,そのような問題意識を持つた学問的情熱である.
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