特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅱ)
膵癌
鈴木 礼三郎
1
,
高橋 希一
1
,
板原 克哉
2
,
牛山 武
2
,
中村 省三
3
,
柳川 一成
4
1東北大学
2鳥飼内科
3中村内科
4山形内科
pp.882-888
発行日 1962年8月20日
Published Date 1962/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202961
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著者の一人鈴木は昨年アメリカに渡り世界で初めて原発性膵頭部癌の手術成功例を持つSt.Memorial Cancer HospitalのBrunschwigを尋ねたが,彼は今を去る26年前の1936年の膵頭十二指腸切除例の摘出標本を示してくれ,現在にいたつても依然として根治手術の成績が芳しくないのは,早期診断が困難で外科医を訪れる頃にはすでに根治手術の時機を失したものが多いことを強調しておられた.一方Mayo clinicのWaughは世界で一番多くの症例をもち,また立派な成績をあげられておる方ではあるが,やはり診断と手術の困難性を強調しており,私の持参した論文の中の「膵臓癌早期診断の可能性として腹部疼痛に関する問題」が臨床的に価値あるもので,いわゆる成書記載の膵癌のいろいろの症状の現われる頃は永久治癒の可能性が非常に薄れる.極く早期に試験開腹するのが現在の所最も大切なことだといつて居られた.滞米2カ月半の間に膵臓癌についての研究者(主として外科医)を各地に訪ねたが概ね同様の意見であり,またこの間2例手術台上に開腹されたのを見てきたが,1例は腫瘤過大,1例はすでにリンパ腺転移のあるという理由で胆道のBypassの手術のみで閉腹された.すなわち2例ともすでに根治手術の域に非ずと判定された訳で如何に早期診断が彼我共に困難であるかを痛感した.
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