Japanese
English
発行日 1958年11月20日
Published Date 1958/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202264
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I.はしがき
前立腺腫瘍の代表的なものは癌腫で,これに比べると肉腫は頻度が極めて低く,日常遭遇する機会に乏しい点で臨床的重要性が少い.今一つ前立腺肥大症はその主要な病理学的変化が腺腫であり,一般に良性腫瘍と看做されている.
前立腺肥大症と前立腺癌は,共に高年男子に限り頻発する泌尿器外科的疾患で,前立腺外科の主要対象となる点では共通性を有するが,発生病理並びに臨床像を全く異にし,治療の面に於いても劃然たる区別が存する.而して今日では腺腫の悪性変化による癌の発生という一元説は完全に否定せられているが,この全く別個の両疾患が同一人の前立腺内に同時に存在し得ることは一般に認められ,而かも併発型が相当高率に存在する.又完全に肥大症の臨床像を呈する群の中に,顕微鏡的小癌病巣を有する潜在性癌(occult carcinoma)と称せられる型がある.併発型にしても潜在性癌にしても何れも前立腺癌の範疇に属すべきものであるが,潜在性癌は臨床診断が殆んど不可能に近い関係上,臨床的には肥大症として取扱われる場合が多い.潜在性癌以外の所謂普通の前立腺癌と肥大症とは,外科的療法に対する態度を異にし,手術術式は勿論,手術に対する適応の限界に於いても大きな差異が見られるので,夫々別個に記述することにする.
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