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センイ素溶解(Fibrinolysis)の現象は古くから知られているが,2・3年このかた各國の研究者の關心をよび,その知見も急速に進歩した。この知見はふるく100年前にさかのぼる。
Zimmermannは1846年食塩水中の牛のセンイ素が10日以上もそのまゝの状態であるのに,濡れた吸角放血法で得た人血のセンイ素は12時間から24時間以内に溶けてしまう事を發見し。たゞしこの事實は既に1838年Denisが觀察したという。Green(1877)は細菌の作用もなくて食塩水中のセンイ素が消失することを發見し,そして一旦溶けてしまうと,トロンビンを加えてもセンイ素が2度と出て來ないことを觀察している。センイ素溶解と言う言葉を最初に用いたのはDastre(1893,1894,1895)であるが,彼は犬の血液について同様な觀察を行い,センイ素は溶けるのでなくて,消化されるのだと結論した。またRulot(1904)に白血球が増加すると反應が促進されるので,その消化に白血球が關與していると信じた。1905年にNolfは犬について色々の實驗を行い,犬の肝臓を切除したり,ペプトン・ショックを起させるとセンイ素溶解が起る事を發見した。Morawitz(1906的は突然死の場合の血液につしいて同様な現象が起きる事を研究し,突然死の血液はフイブリノゲンを含まず,且つ正常血液のブイブリノゲンやセンイ素まで破壞する力があることを認めた。センイ素溶解に關する最も廣汎な研究はソ聯に於て,人の死体の血液を輸血に使用せんとする技術の發展中になされたものである。1937年Yndin及び其の協同研究者達は,人の新鮮なる死体の血液を使用せんとして,最も有効な給血者は,慢性病で死んだ患者よりも,外傷事故等のため突然に死んだ人であるのに氣づいた。そしてこのような突然死の血液は採血後,普通の血液の如く凝固するのであるが,2・3時間で流動性を帶び抗凝固劑を用いすに輸血出來る利益があつたのである。即ち突然死の患者の血液は非常にに早いセンイ素溶解を起すが,慢性病死亡患者の血液はセンイ素溶解を起さないことを彼等は認めたのである。手術に關しては1937年Macfarlaneが外科手術直後の患者のほゞ75%に於てセンイ素溶解が起る事を觀察し,この發見は同年Imperatiにより50%の陽性率を以て追試せられたのである。
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