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甲状腺中毒性關節症Arthropathia thyreotoica
丸田 公雄
1
,
菊池 節夫
1
1東北大學醫學部桂外科教室
pp.222-226
発行日 1948年6月20日
Published Date 1948/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200334
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バセドウ氏病の経過中に關節疾患の發生を見る事は稀で現今迄の之に關する報告例は極めて尠く然かも此少數の報告例の過半數は單にバセドウ氏病に僂麻質斯様の關節疾患が偶然に合併せるに過ぎないものである。バセドウ氏病に僂麻質斯様關節疾患の併發せるものを直らに甲状線中毒性關節症と呼ぶ事は妥當でない。尠くとも甲状腺中毒性關節疲と云ふ以上は關節疾患の發生に對してバセドウ氏病乃至甲状腺中毒症が或程度原因的關係を有する事を想はしむるに足る根據を必要とする。余等が茲に甲状腺中毒性關節症と云ふのはバセドウ氏病乃至甲状腺中毒症の發病と同時に又は夫等の經過中に現はれて慢性進行性に經過し,特に體温上昇或は明白なる炎症を伴ふ事なく,然かも撒曹の如き僂麻質斯治療劑に對しては殆んど反應なく,甲状腺腫亞全切除其他の治療によりバセドウ氏病乃至甲状腺中毒癒が治癒すると共に速かに治癒する様な關節疾患である,余等が關節炎なる名稱を避けて敢て,甲状腺中毒性關節症Arthro—pathia thyreotoxicaと呼稱する所以も亦茲に在る。斯様な意味に於ける關節疾患の報告例ば極めて尠く,本邦に於ては余等砂調査範團内では未だ之を見ない。本疾患は前述の如く基礎疾患たるバセドウ氏病乃至甲状線中毒房症が治癒すれば之と共に治癒するものなるが故に,一般に關節疾患の治療に當つては斯の如き疾患の有り得る事を一應念頭に置く可きである。
茲に本疾患の2例を紹介し特に其發生機轉に就て檢討を試みる所以である。
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