書評
『プロメテウス解剖学アトラス 頭部/神経解剖』―坂井 建雄,河田 光博●監訳
渡辺 雅彦
1
1北大大学院・分子神経解剖学
pp.483
発行日 2010年5月10日
Published Date 2010/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101173
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『プロメテウス解剖学アトラス』の第3巻「頭部/神経解剖」は,「解剖学総論/運動器系」,「頚部/胸部/腹部・骨盤部」に続く最終巻である.本書を手に取ると,つい引き込まれてページをめくりながら読んでしまう.その理由を分析してみた.
まず第1に,本書の図の1つ1つが実に美しいことである.これまでの解剖学図譜で行われてきたような,実物を精巧に再現する図や,できるだけ多くの構造体を網羅するカラフルな図や,理解を助けるために単純化した模式図とも異なり,プロメテウスならではのユニークな図が満載されている.例えば,最初の頭蓋の章では,約40頁に百数十点の頭蓋の全体や各部の図が登場する.そこには,まるで写真のような精巧さで頭蓋底や頭蓋の断面が描かれた図が登場する一方,その隣には各頭蓋骨をパステルカラーで色分けされた図も提示され,個々の頭蓋骨がどのように頭蓋を構成しているのかがよくわかる.頭部の断面解剖では,CTやMRI画像の理解を意図した図も豊富に提供されている.さらに,これらの図が,著者らの意思と目的を具現する手段として作成されている.例えば,脳神経や眼窩領域の部分では,理解させたい部分の表情筋や骨を順次切り取った図が提示され,脳神経や血管の走行経路と分布が理解できる.剖出を行いながらその先の構造体を明らかにしていく,ちょうど解剖学実習を行っているような感覚になる.
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