書評
佐藤 裕(監修)/桑野博行(編)「外科学 温故知新」
岩中 督
1,2
1日本外科学会53の会
2東京大学大学院医学系研究科小児外科
pp.1257
発行日 2012年10月20日
Published Date 2012/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104250
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本書は「日本外科学会53の会」という昭和53年卒業の同級会に所属する外科医たちによって,それぞれの専門領域や得意とする総論領域(外科免疫,輸液栄養,癌化学療法など)が分担執筆された大論文集である.全36編に3編の補遺が加わった本書の執筆にあたっては,どの執筆者も,多忙な外科医生活の合間に,歴史的調査をはじめとする様々な検索,多大な労力を費やされたに違いない.どの論文をとっても,淡々と,また堅苦しく医学史が述べられているのではなく,随所に執筆者の個人的な見解,豊かな経験が溢れており,気楽に読める外科全領域の集大成ともいえよう.
本書には全編に共通して,それぞれの領域の「これまで」が振り返られ,蓄積されてきたいろいろな研究・臨床や開発の歩みが「今」にどのように反映されたか,また若い人たちの教育も含めて「これから」にどうやって結びつけていけばよいか,が明快に記述されている.さらに個々の論文は,今さら恥ずかしくて人には聞けないような基礎的な内容も非常にわかりやすく解説している.コラムとして所々に散りばめられた,監修者の佐藤裕氏(医学史専門家)のうんちくも絶妙であり,本編の論文に色を添えるのみならず,読者の知識欲を巧みに刺激する.全編を通読した個々の領域の専門医諸氏には,幅広い外科の知識を取り戻すことで“general surgeon”としての診療レベルの向上をお約束できよう.また,研修医や医師以外の方々には,肩肘張らずにエッセイを読むような感覚で本書に目を通していただきたい.外科学全体を俯瞰する知識の宝庫である本書は,必ずや皆さんの現在のお仕事の幅を広げるであろう.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.