コーヒーブレイク
気管切開
板野 聡
1
1寺田病院外科
pp.1013
発行日 2008年7月20日
Published Date 2008/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102209
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- 文献概要
外科医,いえ医師であれば気管切開は必須の技術でありましょう.私はそんなに経験がないとは言うものの,気管切開でもいくつかの修羅場をくぐってはいます.それは「ジョーズ」と同様に忘れた頃にやってきますが,麻酔での気管挿管困難例では本当に困ります.最近の経験からご紹介します.
いつもの待機手術の日,手術室に入ると若手の担当医がマスクを当てて麻酔をかけ始めていました.当院では,全身麻酔では担当医以外に医師が1人以上立ち会うことにしていますが,虫の知らせか,そういうときには私も含め複数の医師が集まってきます.いつもの手順で担当医が喉頭鏡を持ち挿管を開始しますが,なにやらやりにくそうです.そして,何度かやり直しをしますが,言葉も少なくなり,やがて「先生,交代していただけますか」の声.中堅医師が交代して行っても入らず.その頃には酸素飽和度が少しずつ下がってきています.私は側にいるナースに「気管切開の準備を」と指示.案外そうした準備をし始めると入ることもあるし,と考えながらも患者の顔色が心なしか悪くなりはじめ,中堅医師に「どう?」と一言.「いや,難しいです.そちらも始めてください」の声.ここまで来ると,それまでの雰囲気が一変し修羅場が見え始めますが,それは自分の胸の内に収めておき,粛々と処置を進めます.
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