ひとやすみ・29
答えなき悩み
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.125
発行日 2008年1月20日
Published Date 2008/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102016
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「命は地球より重い」とされ,われわれ医療従事者はいついかなるときにもすべての患者さんに対して全力を尽くして医療を行ってきた.そして,ときに自分の無力さに嘆くこともあるが,崇高なる仕事に携わる幸せを感じてきた.しかし,最近は少子高齢化社会を迎え,医療従事者としては不遜なる疑問を抱くようになった.
80歳代後半で痴呆のため施設に入所している患者さんが,大腸癌穿孔による汎発性腹膜炎で入院してきたとする.種々の合併症があっても,命を救うためには癌を含めた穿孔部を切除せざるを得ない.そこで,意思疎通ができない患者さんに代わって家族に種々の偶発症を含めたインフォームド・コンセントを行う.突然呼び出された家族は困惑しながらも救命のために手術に同意する.かくして休日の深夜にもかかわらず,日常の診療に疲れきったスタッフが呼び出されて緊急手術が敢行される.
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