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フランス行き
突然の話であった.フランス・パリへやって来いと言われた.外務省勤務時代は何度となく欧州へと足を運んでいて,パリへも数度行ったことがあり,私の一番好きな都市である.外務省時代は航空券の手配からホテルの予約,空港送迎まで付いていたが,もう一介の市民である私には,そんなものはない.バックパッカー経験のある霜田君にお願いして,パリの安宿を予約してもらった.一番安い航空券(エジプト航空であった)を手配してパリへとやってきた.西日本高速道路を主体とする高速道路のサービスエリアなどに出店している企業のパートナーズ・クラブがロシナンテスにCSR(社会貢献)の一環として,協力をしてくれるとのことで,その贈呈式に招かれたのである.ちょうどその時期に「世界道路会議」というものがあり,西日本高速道路,そしてパートナーズ・クラブから多くの方が参加されたために,贈呈式がパリで行われる運びとなった.私には大変好都合で,こうでもないとパリまで行く機会はない.
ロシナンテスの活動は3年目に入ってきているが,実は財政難であり,資金ショート寸前のところまできていただけに,本当にありがたい支援であった.私はこの支援を利用してスーダンでの母子保健プロジェクトを行う予定である.スーダンでは妊産婦死亡率,周産期死亡率,乳幼児死亡率のすべてが大変悪いとのデータがある.感染症の蔓延や安全な水の確保ができないこと,教育を受けた助産婦の絶対的な不足,医療施設の不備,女性性器割礼などの多くの原因がある.これらを一気に改善というわけにはいかないが,この支援を利用して,できることから始めようと考えている.たとえば,日本で使用されている母子手帳をスーダン版にアレンジして,この手帳を利用して妊婦管理,周産期管理,そして乳幼児の健康管理を行っていこうと思う.すでに,日本語で書かれた母子手帳をアラビア語に翻訳してある.これをスーダンの現状に合ったものに改善して使用していきたいと思う.パートナーズ・クラブは,ロシナンテスへの支援のほか,日本国内での産科医師の不足を補うために産科医を目指す医学生の支援を行う予定だそうである.まだまだ日本の企業のなかでCSRを行っているところは少ないが,日本の文化として企業のCSRという概念が出来上がるように私自身も頑張りたいと思う.
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