ここまで来た癌免疫療法・14
―臨床の場で今後の進展が期待される新規治療法―新規ワクチン療法
角田 卓也
1
,
和田 聡
1
,
田原 秀晃
1
Tsunoda Takuya
1
1東京大学医科学研究所先端医療研究センター外科・臓器細胞工学分野
pp.961-964
発行日 2003年7月20日
Published Date 2003/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101452
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はじめに
悪性黒色腫を中心に腫瘍拒絶抗原(tumor associate antigen:TAA)が同定される1)に従って,TAAを利用した特異的癌免疫療法が開発され,臨床試験が進行している.とりわけ,抗腫瘍免疫応答におけるCD8陽性T細胞の重要性が認識されるに伴い,腫瘍特異的CD8陽性T細胞を生体内で惹起させる癌ワクチン療法が注目されている.これは,9個や10個のアミノ酸残基からなるペプチドが共刺激分子の補助によりClassⅠ経路を介してT細胞を活性化し,腫瘍特異的細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte:CTL)を誘導する機序が解明されたことによる.現在,種々のTAAや個々のHLA分子に拘束性を示すエピトープペプチドの同定が精力的に進んでいる.これらペプチドを用いた癌ワクチン療法の臨床試験の結果から,生体内でCTLが誘導できることがわかった.また,一部の症例では臨床効果が得られたという報告もある2~4).しかし,期待されたほど抗腫瘍効果は高くなく,いまだ満足できる臨床効果を上げてないのが現状である.期待どおりCTLが誘導できているにもかかわらず,満足できる臨床効果を上げえていない原因はどこにあるのか? その問題を克服する手段にはいかなる方法があるのか? これらの問題点を踏まえて,今後期待が持てる新規ワクチン療法について論じる.
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