外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・37
腹腔鏡下胆囊摘出術に術中胆管造影は必要か
漆原 貴
1
Urushihara Takashi
1
1県立広島病院一般外科
pp.92-93
発行日 2007年1月20日
Published Date 2007/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101159
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腹腔鏡下胆囊摘出術において術中胆管造影(以下,IOC)は主に胆管結石の有無の確認と胆管,胆囊管の走行を確認する目的で行われるが,ルーチンに施行すべきか否かはいまだに議論されている.胆管損傷を避けるためにはIOCが有用であり,ルーチンで行うべきであると主張する報告において,その利点に胆管の解剖学的位置関係や副右肝管の存在の把握ができることや,胆管内の結石の有無の確認やOddi括約筋の機能を確認ができることを挙げている1~3).一方,選択的に行えばよいとする意見ではIOCは必ずしも胆管損傷の防止に役立っておらず,短所として手術時間が延長することと,胆囊管が短い場合には断端処理が困難となるなどを理由としている4~6).
日本内視鏡外科学会による「内視鏡外科手術に関するアンケート調査―第7回集計結果報告」では,腹腔鏡下胆囊摘出術214,935例における胆管損傷は1,468例で,0.68%に認められた7).さらに術後の胆管狭窄117例を加えると0.74%となり,135例に1例の割合で発生していた.その原因は総胆管の誤認と止血操作によって生じる.腹腔鏡下胆囊摘出術は低侵襲で社会復帰が早期である利点の裏腹に合併症としての胆管損傷の代価は大きい.
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