外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・29
メッケルの憩室の切除は必要か
猪股 雅史
1
Inomata Masafumi
1
1大分大学医学部第1外科
pp.642-643
発行日 2006年5月20日
Published Date 2006/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100443
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【Meckel憩室と虫垂炎手術】
「虫垂炎の診断で開腹した場合,虫垂に異常がなければ回腸末端のMeckel憩室を検索せよ」.これは十数年前,筆者がまだ医学生の頃,外科学系統講義の虫垂炎の話題のなかで,当時のK教授から教わった言葉である.学生時代の講義内容はいまではほとんど記憶にないが,この言葉はなぜか鮮明に記憶している.早く臨床医になって手術がしたいという外科志望の学生の気持ちを刺激する印象深い言葉であったのだろうか.外科医となったのちも,虫垂炎の手術に際してはこの言葉を忠実に遵守するようにしてきた.若い外科医と一緒に虫垂炎手術を行う立場となったいまでは,K教授の言葉をmodifyして「虫垂に異常がなければ,小児ではMeckel憩室と腸間膜リンパ節炎を,若年成人ではクローン病,成人では大腸憩室炎,女性では卵巣囊腫や骨盤内臓炎を考え,その検索を怠ってはならない」と自分に言い聞かせるつもりで術中,若い後輩たちに話をするようにしている.
ところで,「Meckel憩室を検索せよ」とのK教授のお言葉であったが,検索の結果,Meckel憩室が実際にあった場合にはどのように対処すべきなのか.切除すべきか放置でよいのか,切除するならば憩室のみの局所切除でよいのか広めに分節切除すべきなのか,この点に関しての記憶は定かではない.
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