外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問 18
術前手洗いにブラシは必要か
山村 義孝
1
Yoshitaka Yamamura
1
1愛知県がんセンター消化器外科
pp.898-899
発行日 2005年7月20日
Published Date 2005/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100139
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筆者が外科医になりたての頃は,最初に清潔と不潔の違いを厳しく教えられ,手術手技を覚える以前に手指消毒(以下,手洗い)を徹底するよう教え込まれた.先輩に監視されながら,前腕の皮膚が真っ赤になるまでブラシで擦った記憶がある.現在においても,多くの施設でこれと似たようなことが行われていると思われるが,このようなブラシの使用についての医学的根拠は乏しい.多分に経験主義的あるいは徒弟制度的なものによる,先輩から後輩に受け継がれてきた一習慣に過ぎないと考えている.
術後感染の防止のためには清潔な操作が重要であるということは,150年ほど前にSemmelweisによって証明された.彼は産婦人科の医師であり,手洗いをすることによって,当時,高率に発生していた産褥熱を防止することに成功した.以来,術前の手洗いが定着し,やがて術野のいっそうの無菌化をはかる目的で滅菌した手袋が用いられるようになり,現在に至っている.
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