連載 症候学メモ・30
凹み手徴候—拇指の反りがポイント
平山 惠造
1
1千葉大学神経内科
pp.525
発行日 1987年6月1日
Published Date 1987/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205918
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◆凹み手徴候main creuseといわれる徴候がある。吉倉範光先生(元日大教授・小児神経学)はいち早くこの徴候に窪み手(くぼみて)の和名を用いて居られたが,筆者はそれに気づかず,凹み手(へこみて)としてしまった。「凹み」も「窪み」も辞書をみるとほとんど同様の説明がつけられており,何れも当用漢字からはずされている。「くぼみ」を引くと凹みと窪みが出てくる。「へこみ」を引くと凹みが出てくる。従って,「凹み」はくぼみとも,へこみとも読めるようである。
◆この徴候には2種類あるとされている。錐体路性麻痺によるものと,錐体外路性緊張亢進によるものとである。しかし,筆者は末梢神経性の麻痺によるものもあるとみている(拙著神経症候学参照)。それはとも角として,凹み手徴候は,指を開げ反らそうとしたときに,手の平に凹みが出来ることからこの名がある。この凹みは拇指の中手骨が手掌の側へせり出してくるために生じるものである。このときに大切なのは,拇指の基節や末節は反り返っていることである。即ち,中手・基節関節は内側に向って突出してくる。
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