特集 図説 形態用語の使い方・使われ方
第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語
b.X線・内視鏡所見用語
拇指圧痕像(thumbprinting)
望月 福治
1
1仙台市医療センター消化器内科
pp.396
発行日 1996年2月26日
Published Date 1996/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104068
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拇指圧痕像(thumbprinting; Boley et al,1963)は,中等度の充満注腸X線像で,Fig. 1の粘土の模型像のごとく,あたかも指で圧したような卵円形,または円形の丸味を帯びた隆起が連なるような像として見られる.Fig. 2は頻回の大量血便直後,無前処置のまま注腸造影を行った悪条件下の充満X線像で,典型像が描出されている.内視鏡で見ると凝血塊状のものが存在し,わずかに観察できる粘膜は浮腫状で潰瘍を伴っていた.二重造影像(Fig. 3)では空気量の多少で像が変わり,また,バリウムの溜まった条件のときに描出されやすい(Marston et al,1966).
粘膜下層に浮腫を生じ,新鮮な肥厚を来すための所見とされ,更に病変のある腸管はspasticになったり,伸展不良を伴い,この所見がより強調されるが,壁は軟らかさを保っている.主として虚血性大腸炎の初期にみられる所見であり,小腸でも同様な病変により現れる.このほか,薬剤性大腸炎の発症時をはじめ,共通の条件を来す病変でも出現する.同義語にpseudopolyposis(Thomas,1972),scalloping(Fig. 4)(Thomas,1972),pseudotumors(Schwarts,1964)などがある.
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