Japanese
English
総説
母体要因による脳障害
Brain Dysfunction Induced by Maternal Factors
田中 晴美
1
Harumi Tanaka
1
1国立武蔵療養所神経センター・疾病研究第2部
1Division of Mental Retardation and Birth Defect Research, National Center for Nervous,Mental and Muscular
pp.1033-1041
発行日 1985年11月1日
Published Date 1985/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205603
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1.はじめに
先天異常は遺伝と環境の両要因に支配されている。一部には遺伝子型によって決定されるもの,あるいは環境要因に強く影響されるものがあるが,大部分は多種多様な遺伝・環境要因の相互作用にもとづく。母体要因も遺伝と環境の両要因と密接に関連している。しかし,本稿ではとくに,予防・治療の可能性の高いという観点より,母体要因として環境因子を重視した。妊娠母体の環境要因とは,母体年齢などの生理・生活環境,妊娠合併症,風疹などの母体合併症,抗けいれん剤などの治療薬剤,エタノールなどの嗜好品,有機水銀などの公害物質,放射線があげられる。一方,脳障害は脳発達段階のいかなる時期においても生ずる。しかし,妊娠母体要因による脳障害の発生時期は出生時までであり,時期的には,遺伝子,配偶子,胎芽,胎児の時期を含む。この時期においても,前2者は遺伝が主役であり,後2者において環境因子が主役となるといえる。したがって母体環境要因による脳障害とは胎芽・胎児病に主眼がおかれる。これらに関し,原則的な概念をまとめ,ついで,環境要因による脳障害例を記述する。
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