随想
膜電位と脳虚血
佐野 圭司
1,2
1東京大学
2帝京大学
pp.226-227
発行日 1985年3月1日
Published Date 1985/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205471
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—さるは,かう思ふ人ことにすぐれてもあら じかし。いづれをよしあしと知るにかは。され ど,人をば知らじ,ただここちにさおぼゆるな り。—清少納言(枕冊子,188)
からだのすべての細胞は膜電位を持っている。しかも膜の内側が外側に対して負(陰性)である(ただし神経細胞と筋細胞では非興奮時にだけあてはまる)。神経細胞についてはこの電位は定常で70mV前後と測定される。膜のすぐ外側はNa+イオンが多く,すぐ内側はK+と陰イオンが多い。内側の陰イオンの大多数をしめるのは蛋白質の大分子の陰イオンである。神経細胞が「興奮」すると,膜の透過性が変わり,Na+が細胞外から細胞内に流入する。K+に対する膜の透過性ははじめはほとんど変らない。したがって流入する正電荷の量がずっと多いので膜電位は減少し,ついには極性を変え,膜の内側が外側よりも正(陽性)となる--depolarization脱分極。正常にはこの脱分極相につづいてrepolariza—tionがおこり,もとの膜電位にもどる。これにはK+の細胞外への流出が大きな役割を果している。実際はさらにovershootして(いわゆるhyperpolarization)からもとにもどる。このような膜電位の瞬間的な変化が活動電位である。
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