書評
—P. A. Tumulty 著 日野原 重明(聖路加国際病院臨床医学教育顧問) 塚本 玲三(東海大学講師・内科) 訳—新しい診断学の方法論と患者へのアプローチ—よき臨床医をめざして
相澤 豊三
1,2
1立川病院
2慶応義塾大学
pp.893
発行日 1978年8月1日
Published Date 1978/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204292
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- 文献概要
わわれれ臨床家が多くのむつかしい症状をとらえ,日日診療に苦労しているのは,つまるところ先ず正しい診断を下し,いかに適切な治療を行なうかに目的があるからである。適切な治療に直結するこの診断の完壁を期するためには,古来種々の工夫が重ねられ,それは既に,わが国においても優れた数々の臨床医家により明らかにされているように,一般には先ず問診に始まり,視診・打診・聴診・触診等の理学的診察を経て,これに検査室所見を加えた総合的判断にいたる過程を含むものである。先人の貴い経験にもとづいた古典方法の粋をえらび,これに近代化された多彩にして精密な検査室所見からの長をも加えて,さらに診断の確実性を求める傾向に進みつつあることは事実であるが,それをいかに論理的に体系づけるかは各人の頭脳の働きによるものであり,したがつて広い深い経験によつてたたき込まれた知識の集積がものをいうことになるのは当然の帰結である。臨床医学における知識の受け売りはできるが,その術は受け売りが出来ないのである。
このたびP.A.Tumultyによる掲題の書が,日野原重明・塚本玲三両氏の訳によって上梓された。
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