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Baroreceptorの除神経により実験的に高血圧を作成し得るが,人の高血圧におけるbaroreceptorの役割については議論の多い所である。舌咽神経痛のため一側の舌咽神経を切除し,barorecepterの部分切除を行つた後持続性の高血圧の出現した例を経験した。
症例は43歳女,母に高血圧がある。14年前骨盤内炎症のため子宮全摘後数回骨盤内の嚢腫のため開腹手術を受けているが,高血圧を指摘されたことはない。8ヵ月前より左の耳に間欠性の鋭く電撃様の疼痛があるが特にtriggerはなかつた。耳,鼻,咽頭などに異常なく,頭痛,味覚障害,平衡障害などもなかつた。神経学的に特に異常なく,血圧は140/90mmHg,脳スキャン,頭蓋レントゲンなどには異常を認めなかつた。入院後手術までの血圧は110/70〜140/90mmHgであり,脈拍は60〜70/分であつた。後頭蓋窩開頭で左中間神経と舌咽神経の切断を行つたが,局所に特に異常はなく,術中の血圧は100/60mmHg,脈拍は90/分であつた。麻酔から醒めた時血圧は150/110mmHg,脈拍110〜120/分となり,その後頻脈を伴つて血圧は160/100〜110mmHgと高く,最高190/130mmHgにも達した。減塩療法とHydro—chlorothazide投与を行つたが下痢が数日続き,血圧は160/115mmHg (臥位),90/75mmHg (立位)脈拍は立位で120〜140/分と増加した。尿中17—OHCS,17—KSなどに異常なく9日目に利尿剤はやめPropranolol 40mg/日に切換えた。血圧は140/94mmHg (臥位),脈拍90〜100/分に減少し,80mg/日で130/70mmHg,72/分となつた。退院後2日で132/82(臥位)→120/90(立位),脈拍82/分→84/分であつたがPropranolol中止で再び150/110mmHgと上昇したため再び投与,術後2カ月で本剤投与中で150/90mmHg,,68/分(臥位),150/100mmHg,68/分(立位)の状態である。
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