ご存知でしょうが
目玉の動き
中西 孝雄
pp.450
発行日 1976年5月1日
Published Date 1976/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203878
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「眼光紙背に徹す」,「眼は口ほどに物を言う」,「眼の色を変える」など,眼に関する語句は多いが,医学は未だ「眼の光」を研究の対象とするまでには至つていない。眼振とか共同偏視のような,ベットサイドでしばしば遭遇する眼の動きの異常さえ,とかく難解な症候と考えられているので,「眼の光」までは,とても手が及ばなかつたためである。しかし,少くとも「眼の動き」に対する欧米諸国における熱心なアプローチは,最近20数年間に目覚しい研究成果をもたらしている。ここではその2〜3について触れてみることにする。
眼球運動には,衝動性運動(saccadic movements)と滑動性運動(smooth pursuit movements)との2種類あるが,衝動性運動は,注視していない(網膜中心窩にない)視標を見ようとする時のす早い眼球運動であり,滑動性運動は,比較的遅く(30°/sec以下)動く視標を追視する(網膜中心窩に保つ)時の滑らかな眼球運動である。それぞれの中枢は別々の所にあり,衝動性運動は前頭葉(area 8)に,滑動性運動の中枢は後頭葉(area 18, 19)にあることが知られている。ところで,衝動性運動と滑動性運動とは,ともに水平および垂直の両方向に起り得るので,それぞれの中枢は,水平方向の運動にもまた垂直方向の運動にも関与していることになる。
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