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I.序論
脳腫瘍の組織培養については,1961年にG.Kersting1)が,400例に近い培養例に基づいて立派なモノグラフを出した。これに相前後してC.E. Lumdsen2)がD.S.Russellの著書の一部に82例の培養の所見を論じている。わが国では佐藤3)〜5)が,1960年から1963年にかけて,多くの業績を発表した。これらは培養方法としてはすべて腫瘍組織の細片をplasma clotなどでcover glassに付着させ,roller-tube内で回転培養をさせる方法が主であった。これらについてはそれぞれの文献を参照していただきたい。
その後,培養方法にも種々の改良進歩がみられ,むしろ細胞培養とよぶべき方向に発展してきた。これはtrypsinなどを用いて,腫瘍組織をあらかじめ個々の細胞に分解しておいてから培養しようとするもので,われわれは数年来この方法で脳腫瘍を培養することを努力してきた6)。なぜならば,この方法で培養したほうが,均一に細胞がばらまかれて生育し,また数十本の培養瓶のそれぞれについても一様な培養成績が得られるため,後に述べるような各方面への応用が可能になるからである。現在,われわれはこの方法—trypsinization-mnolayer法によつて,あらゆる種類の脳腫瘍組織を,ほとんど100%近い成功率で培養している。外国でも,C.B.Wilson7)が,われわれとほぼ同様の方法で脳腫瘍の組織培養を行なつているが,まだ,この方法によるアトラスあるいはモノグラフなどは世に出ていない。そこでわれわれはroller-tube法による約100例の培養の経験を参照しつつ,monolayer法による新たな約100例の培養例に塾ついて,ここに小アトラスの作成を試みた。
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