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I.はじめに
1923年Sicardら34)は初めて脳室内にLipiodolを注入してその無害性を認め,1928年Balado6)は初めてLipiodolによる脳室写を行なつた。また本邦では1941年以来浅野2)3),星野14)により本邦製品Moljodolを使用した脳室写が開拓され,集大成されている。一方1943年に合成された低粘性の造影剤Pantopaque (Myodil)を使用してBull7)は脳室写を行ない,その安全性を報告している。Myodilが本邦にて入手可能となつて以来,本剤使用による脳室写が星野ら15)16),浅野4)らにより報告され,その安全性が強調されている。一方1935年Ly—sholm21)はLipiodolによる脳室写の危険性について警告し,以後Lipiodol,Pantopaqueによる主としてmyelo—graphy後の重篤な合併症についての報告が散見され11)22)26),これらの事実は,髄液を排除せずにgasを注入すると脳圧亢進時にも気脳法が安全であるというSweden学派19)20)の提唱に基づく分画気脳法による脳腫瘍診断の発達と相まつて,Robertson31),Cornelisら9)の表現を借りれば「陽性造影剤使用に対しての偏見」ともいうべきものが生ずるに至つた。しかし頭蓋内手術の対象となるべき病変の局在決定は高度の厳密性を要求され,Dandy10)も脳腫瘍の局在が絶対的に確実でなければ試験的手術侵襲を加えるべきではないと述べ,また荒木1)も誤まつた開頭は単に助け得べき患者を助け得ないということではすまず,想像以上に有害であると述べ,Ralstonら30)も同様に試験開頭の有害性を述べている。第3脳室周辺および後頭蓋窩腫瘍の局在診断における陽性造影脳室写の有用性は諸家の認めるところであり,Pantopaque (Myodil)の使用,脳室ドレナージの併用4)5)9)14)16),レ線映像増幅装置による被曝量の著減などの技術的改善により,本法の安全性が増大した現在,適応に応じて躊躇なく本法を使用すべきであるという意見が多数4)5)9)12)16)17)28)31)発表されている。また本法が定位脳手術の際の基準線決定に利用されていることは周知のごとくである。
私どもは昭和31年11月から昭和40年8月に至る約9年間に163症例に対して170回陽性造影剤による脳室写(以下ヨード油脳室写)を行なってきたが,そのうち他科入院例などを除く150症例における157回(以下157例と記す)の本法施行結果について諸種の統計的検討を加えてみた。再検例7例はいずれも別のときに新たに造影剤が追加注入されたものである。本報告に述べるごとき本法の副作用,ドレナージの有用性などについてはすでに星野ら14)〜16),浅野4)らによつて報告されているところであるが,私どもが本法を施行した場合の実際について検討と反省を加えてみたわけである。
Iodoventriculography was performed by us in 157 cases during a period of 9 years. Its diagnostic value and its side effects were studied statistically in these cases. In 62% of the cases it contributed decisively to reaching final diagnosis and in 34% of the cases it'contributed confirmatively to reaching final diagno-sis. Thus it was useful for getting final diagnosis in 96% of the cases. It was of particular diagnosticvalue in midline and posterior fossa lesions as has been reported by various authors. Misdiagnoses in 7 cases were analyzed and it seemed that most of these errors should have been avoided by sufficient training of the examiner. There were 2 fatal cases, both of which were hydrocephalic infants and in which ventricular drainage following Moljodol (Li-piodol) injection worked poorly. Myodil ventriculo-graphy, combined with postoperative ventricular dr-ainage with a sufficiently thick drain, is a fairly safe procedure and side effects such as fever and headache are mostly transient. It is far safer than immediate exploratory craniotomy without this procedure.
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