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光の受容装置としての網膜は発生学的に脳の一部であり,その構造も中枢神経に類似している。組織学的に10層を区別し,これは構成細胞の層的配列によるもので,模式図によつて細胞の配列と興奮の伝達方向を示す。光刺激が神経興奮に変えられる場所は視細胞の外節で,ここに感光色素が含まれ,興奮はここから順次,双極細胞,神経細胞と伝えられていく。水平細胞とアマクリン細胞とは網膜内のこれら細胞の横の連絡をするもので,また興奮の調節機能にも役だつと考えられる。とくに,遠心性線維がアマクリン細胞に終わることは興味漆い。色素上皮細胞は外節に含まれる感光色素の合成,再成にあずかるものである。
紙面の関係上,図示は視細胞の構造のみにとめる。視細胞には明るさの知覚に関係ある桿扶体視細胞と,色の知覚にあずかる錐状体視細胞とがある。桿状体と錐状体とは外限界膜から外方に突出しそれぞれ外節と内節とからなり,この両者は細く短かい茎状の構造で結ばれている。外節は発生学的には内節から出る線毛の先端が膨大延長して,その内部特異な層板構造が発達したものであるから変型線毛看の一種である。層板扁平円形の嚢が密に集積したものでこの嚢(rod sac, cone sac)は外節の細胞膜の陥入で作られ,その限界膜が感光色素の所在部位と考えられる。内節の外半部はいわゆるellipsoidで,大きな糸粒体が悟密に集団をつくつて充満している。内半部はmyoidとよばれ,小胞体やゴルジ体が認められる。錐状体視細胞の終末は足状に広がつているから小足pedicle,桿状体のは小さな膨大として終わるから小球spheruleとよばれる。ここで,双極細胞と水平細胞の突起とシナプスを作るが,この際これらの突起は小足または小球内に深く陥入しているのが特長である。小足および小球内にはシナプス小胞,糸拉体,シナプスリボンが認められる。
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