特集 脳底部に異常血管網をを示す疾患群をめぐつて
小児脳血管閉塞症と脳底部網状異常血管像
坪川 孝志
1
,
宮永 盛郎
1
,
福田 明史
1
1金沢大学医学部第1外科
pp.539-547
発行日 1966年5月1日
Published Date 1966/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202052
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I.緒言
小児の内頸動脈および脳内大血管の閉塞症はまれなものであるが(Taveras & Poster20),Wells et al24),Brandt et al2),Wissoff et al26)),最近本邦においては,本症の頸動脈造影において,内頸動脈サイフォン終末部の狭窄ないしは閉塞した例で,その脳基底部に特有の網状異常血管像を認められる例が報告され,その本態をめぐっての論議が注目をあつめている(佐野16),工藤11),鈴木19),森安13),西本ら14))。しかし,症例が少なく,死亡例に対する検索も少ないために,この網状異常血管像の本態が,内頸動脈の閉塞のために生じた副血行路であるのか(工藤)11),血管奇形として,西本のいう14),動脈奇形か,あるいは佐野の報告16)のごとくtelangiectasiaであいるかにつての結論も得られていない。剖検例の検討(牧ら)12)によると,形態学的には動静脈奇形に近いものでありながら,副血行説を否定できないとしている。そこで,この問題の解決としては,症例が少ないとはいえ,小児脳血管閉塞症の閉塞部位およびその性状と,網状異常血管像の出現率についての正確な検討と,それらの時間的推移について検討するのが,網状異常血管像の本態を知るための一つの方向となろう。また工藤ら11)の報告のごとく,網状異常血管像が副血行であるとすれば,ウイリス動脈輪の閉塞が必須の条件であるか否かについても検討の必要がある。最近経験して,十分に検索を行ないえた小児脳血管閉塞症の7症例を中心に,これらの諸点に注目して考察を加えたい。
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