特集 第23回日本脳神経外科学会・II
特別討議
極低体温法
橋場 輝芳
1
1札幌医大脳神経外科
pp.332
発行日 1965年4月1日
Published Date 1965/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201815
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いかに低体温下といえども,生体がまつたく正常に回復できる程度の状態では全脳血流遮断時間にはおりずから限度があると考えねばならない。すなわちこのような条件下においても,なお脳代謝は継続しているものと考えねばならないからである。従つてこの遮断許容時間を左右する最大の因子は酸素欠乏状態におげる脳組織の耐性と異化代謝産物の蓄積に対する脳組織の耐性の程度如何といろことになる。脳組織が酸素欠乏にはいちじるしく敏感であることは衆知の事実であるが,脳酸素消費量を低温下において検査し,またbiolo—gical deathの結果から25℃領域における安全閾はほぼ確定している(8分〜15分)。
しかし,その後さらにこの安全閾を延長せしめようとする研究はあくことを知らず続けられてぎた。すなわち低温麻酔の改善,体外循環の応用,人工灌流法および灌流液の選定である。いずれにしても究極の目的は脳組織に非可逆的変化を生ぜしめることなくいかに遮断時間を延長せしめ得るかにあるわけで,実験的には病理学的脳組織障害の程度がその判定基準になるりも当然のことである。
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